布袋尊は七福神の中で唯一実在した人物です。中国唐代の禅僧で名を「契此(かいし)」と称しました。生まれた年は不明ですが、916年に亡くなったと伝えられています。大きな袋を担っていたことから「布袋和尚」と呼ばれ、吉凶を占い、天候を予知する能力に優れ「弥勒菩薩の化身」とも言われています。
永澤寺「おさすり布袋尊」の誕生はいくつかの善意が重なり実現しました。観音さまに導かれ、佛さまの意思によって生み出されたと言えるかもしれません。
使用材は尾州桧の寄木造り、いわゆる大観音さま、仁王さまの姉妹木から彫り出しており、触れるということを前提に、お身躰、衣、布の袋、この三つの部分を異なるタッチで彫刻しています。
ところで、「日用品を入れていた」とされる布袋さんの袋、さて何が入っているのでしょうか? 想像できなければ袋の形や質感を彫刻することができません。お米かな?衣かな? 幼児と遊び、大器度量の布袋さんにとって袋が一杯になるほどの日用品って何だろ?
絵を描き粘土でお姿を模索してましたが、いつしか「夢」という言葉が脳裏に浮かびはじめました。そうです、あの大きな袋の中身はきっと子供の夢、布袋さんを慕う村人の夢で一杯だったのです。私も安心して袋の中に有馬さんの願い、御老師の願い、お参りする方々の夢をいっぱい、いっぱい詰め込んで膨らませる事にしました。こうして大きく膨らんだ袋の上に布袋さんが腰をおろし、脇では童子が布袋さんの袖をしっかりと握りしめ、ウトウトと夢見る・・・こんなお姿が完成したのです。
布袋さまは子どもの守り神でもあります。布袋さんとお子さんを交互に撫でながら語りかける若い御夫妻や、お孫さんを抱き上げて撫でさせてあげる、おじいさん・おばあさんの姿、布袋さんの周囲は、きっと夢と笑顔が絶えないのでは無いでしょうか?
布袋尊像はこの後、一年間本堂内で自然乾燥させ、金箔を張って鐘楼下にお祀りいたします。触れることでお姿を感じていただき、金箔が剥げてしまうほどにお徳を授けて頂きましょう。そしてお徳を頂いた皆様と一緒になって再び金の衣を着ていただく作業をしたいと思っております。こんな楽しい作業が長い年月の中で、儀式となりご縁日となって続いていくことを夢見ています。
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