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   とうとう千百十一日目がやってきた。 和尚さんは、仏様を拝んだあと、 ゆっくりゆっくりと竜女のそばに来て、
    「竜女よ、よくやった。苦しかったじゃろう。ようしんぼうしよったな!。
よし、それでは悟りを授けよう。」
「ナム シャカニブツ ナンマイダー ナム シャカニブツ ナンマイダー ナンマイダー 竜女をもとの姿にかえさせ給えー、”カァーツ”」
 
  そこには、大きな竜が現れた。
    「ありがとうございます。ありがとうございます。おかげ様でもとの竜になれました。これで天へ帰る事ができます。
ご恩は決して忘れません。ありがとうございました。ありがとうございました。」

「何もお礼にさし上げるものがありませんので、私の脇腹のうろこを九枚さし上げます。」

「いやいや、礼にはおよばん。お前の大事な大事な身を守るうろこだ。 わしには無用じゃ。」

「いえいえ、このうろこは雨をよぶ不思議な力をもっています。めったに人に見せてはなりません。一月も二月も雨が降らなかった時、このうろこを出して雨をよんで下さい。」

「そうか、それはありがたい。大事に大事にして倉にしまっておこう。ありがとうよ。」


「私が天へ飛び上がる時、ものすごい土煙がし、飛びたったあとに大穴があき、水がわき出し、百年、いや、千年たっても水はかれません。“蛇沐水”とよんで下され。この水をうろこにかけて下され。きっと雨をふらせてしんぜます。では、今から天へ飛びたちます。お世話になりました。さようなら、さようならー。」
「ゴォーッ!」
 
   それはそれは、ものすごい音がして 竜は空高く飛びあがっていった。
 竜が言い残したように、天へ飛びたったあとには、 大きな穴があき、きれいな水がわいてきた。
  「あっ!、まぎれもない、水だ、水だ。 “蛇沐水”だ。
竜よ、竜よ、ありがとう。」


「和尚さま、ありがとう。ご恩は決して、決して忘れませんー。いつまでもお元気でー。」

「竜よー、たっしゃでくらせよー。」
 
       
   ある年、雨は一月も二月もふらなんだ。 稲や野菜などは半分かれてしもうた。 お百姓さんは、食べるものもなくなってきた。
   

「わしら雨がほしい、雨がほしい。   神様、仏様どうか雨をふらせて下さい。 お願いです、お願いでございます。」

「わしら、もう、くう物がない。 腹がへって、もう死にそうだ。」

「和尚さんに雨ごいをしてもらおう。  お〜い、みんな、頼みに行こう。」

 
  みんなお寺にやってきた。
  「和尚さん、雨ごいをして下され。   わしら、もう死にそうだ。」

「そうか、そうか。よし、あの竜のうろこを出して”蛇沐水”をかけ。      雨ごいをしようぞ。」


「わあーっ、ありがたい。ありがたい。雨ごいだ、雨ごいだー。」

「 ナム シャカニブツ  ナンマイダー ナンマイダー」

「ナンマイダー ナンマイダー」


「竜よ、雨をふらせておくれ。
ナンマイダー ナンマイダー」

「竜よ雨をふらせておくれ。 竜神様、竜様、雨をふらせたまえ。ナンマイダー ナンマイダー」
 
   見るみるうちに、空には黒雲がいっぱいに広がって、 大つぶの雨が「ザー、ザー」とふってきた。
  「やあーっ、雨だ、雨だ。」
「うあー、雨だ、雨だ。」
 
   みんなは飛びあがって手をたたき、 おどりまわってよろこんだ。 稲や野菜は、この雨で もとの元気な姿になっていった。
 
 
   竜との約束もあってなあ、めったに人には 見せられへんけど、雨ごいの竜のうろこは、 今も永澤寺にあるんやて・・・・・・。
       
   
おしまい
 
       
       
 
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